公営塾

知人が公営塾の講師をしている。

基本的には過疎地域にある市町村に呼ばれて、高等学校の生徒募集の一端を担う形だ。

公営だから、もちろん講師料が支払われる。生活するには心許ない額なので、たいていは大学生か定年を迎えた元教員が講師におさまる。だが、知人は働き盛りの年齢である。忙しい中、過疎地域まで車で移動し、全科目を一人で担当している。公務員試験を受験する生徒や国立大学の推薦入試対策を望む生徒、センター試験の勉強に特化してほしい生徒など、要望は様々なようだ。

 

公営塾を利用する生徒は少ないものの、個別対応を迫られるとあってはなかなかたいへんそうである。それでも知人は自身の理想を胸に抱いて生徒に接し続けている。なかなかできることではない。

 

以前、市町村の思惑と学校運営の現実とで板挟みになっていたことがある。(私が興味深そうな顔をしているので、よく話をしてくれる。)勝手な想像だが、その頃は気力を奪われていたのではないかと思う。

 

教え子の一人から、「手紙をもらった」と言っていたこともあった。とてもかわいらしい字が並んだ感謝の手紙だ。知人はそのとき言った。

 

「これこそが本当のやりがいなんだよ!これだよ。」

 

なんだか嬉しい一言だった。