眠っているときの夢の話4

道に迷う夢を見ていた頃は、締め切りに追われていて嘔いたりしたこともあった。嘔いても熱があっても、休むことができない時期が仕事にはある。解決方法はないのだから、何も考えずにひたすら自分をごまかすしかない。

 

こう書いていくと出口が見えないまま突き進むしかなかった自分の姿が見えてくる。夢で道に迷うようになったのも当然だったかもしれない。

 

何が自分を仕事にとどめたかというと、“ある人”の存在だ。転勤で九州からやってきたスタッフで、とても優秀なひとだ。仕事で優秀なだけでなく、思いやりに満ちた言葉を使う人で、私は急速に自分が変わり始めていることに気付くようになる。

 

ここ数年一緒にやってきた人物も優秀と言われてきたが、あまりに多忙な人だったので、互いに意思疎通を図れずにいた。だから、急に投入されたスタッフに対しても冷静な視線を向けていたと思う。ゆっくりじっくり広島に馴染んでもらうことがいいと感じていたこともあって、最初はほどよく距離を保っていたのだ。しかし、機転が利く上に優しい人柄であることがわかり始めると、急速に私の仕事の能率が上がり始めた。今まで迷っていたことを相談したり、仕事を進める上でアドバイスを求めたりして、既にどっぷり甘えてしまっている。

 

今の仕事を続けて来た理由は「人」だ。                                                            イイ年齢をして甘いことを言っていると思う人もいるかもしれないが、自分にとって、“有能な人と一緒に仕事ができること”は極上の幸せなのだ。再び仕事の楽しさを教えてくれたスタッフに本当に感謝している。苦しい時期が数年続いたが、この出会いがあったからこそ仕事へのやりがいを再認識できたと思っている。